前回説明したhitotoi(ひととい)の独自技法「金胎陶芸」についてですが、少し分かりづらい部分などもあったと思いますので、補足事項を追記しますね。
七宝(エナメル)と陶芸の釉薬の違い
七宝はガラスの細かい粉を溶かして模様を付ける技法、陶芸は材料を混ぜ合わせたものを焼くことにより、化学変化を起こし模様などを付ける技法だと、前回書きました。
この書き方だと全く別の釉薬のような感じを受けますが、基本的な材料は同じなのです。
違いは一度焼成しているかどうかです。
陶芸
原料となる硅石、長石、金属などを、計算された配合で混ぜ合わせ釉薬を作ります。その釉薬を素焼きした陶器(金胎陶芸の場合は金属)に付けて焼成。
化学変化を起こし色を出し、ガラス質にします。
このガラス化された釉薬が陶器などの周りについた状態が、釉薬を使った陶器です。
七宝
原料となる硅石、長石、金属などを、計算された配合で混ぜ合わせ焼成します。
化学変化を起こし色を出し、ガラス質にします。ガラスになった釉薬を細かく砕いて釉薬が完成です。
この釉薬を金属に付けて炉で焼成すると、再び溶けて初めに作った色のガラスで覆われます。
実際に釉薬を見比べてみよう
上の写真を見ていただけるとわかると思うのですが、七宝の釉薬はすでに色がついています。この七宝の釉薬は炉の中で溶かすと緑色のガラスになります。
陶芸の釉薬は化学変化を起こす前なので発色後の色をしていません。この釉薬は焼成すると化学変化を起こし、ピンクのガラス質になります。
ですので、陶芸の釉薬を数種類のせても焼成前はほぼグレーだったりします。それが焼成されると美しい模様を作りだすのは感動的です。
この辺りが、七宝は絵具で絵を描くアート、陶芸は化学変化のアートといった表現を使った理由です。
どちらが秀でているということではなく、どのような表現をしたいかの違いになります。
hitotoi(ひととい)が陶芸釉薬を使う理由
私の場合、あるプロジェクトで作品に色を使うことになり、初めは金属なので、やはり七宝の釉薬を試してみました。
天目のような模様など、色々と挑戦してみましたが、クライントが求めるものがハンス・コパーのような渋さや、ルーシー・リーのようなテクスチャーであったため、陶芸の釉薬を金属で使ってみようと方向を変えました。
試行錯誤の上作品は出来上がりました。このプロジェクトでの経験がhitotoi(ひととい)の金胎陶芸アクセサリーへとつながっていきます。
この辺り事はまた別の機会に書こうと思います。