制作風景・技法

実はかなり難しい。陶芸釉薬と金属。

hitotoi vase ジュエリー eyecatch

hitotoiの犬塚です。

陶芸の釉薬を金属に焼き付けてます!

へー

といった感じで驚きなく受け入られることがありますが、実はこれ結構難しいことなんです。

今回は”金胎陶芸=金属に陶芸釉薬を焼き付けること”についてお話ししたいと思います。

それって七宝とどう違うの? まずは七宝とは。

金、銀、銅などの下地に釉薬を溶かし、ガラス質でコーティングしたものを七宝やエナメルといいます。ジュエリーだとルネ・ラリックが有名ですね。西洋で開発されたエナメルが日本にわたり、日本では七宝やホーローと呼ばれるようになりました。七宝は主にジュエリーなどの装飾品や工芸品、ホーローは鍋や花瓶などの生活用品でつかわれます。基本的には同じものと考えて問題ありません。

ちなみに英語でコールドエナメルと言われるものがありますが、これは色を付けた樹脂をジュエリーなどにつけたものです。エナメルと言われていますが、見た目だけで本来全くの別物です。

七宝の釉薬は簡単に言うと色のついたガラスの粉です。これをペースト状にして金属の板などに乗せ、電気炉などで800℃くらいで焼き付けます。基本的にはガラス粉の色がそのまま作り出す模様の色になります。しかし、色を付ける金属や温度等によっては変色してしまうなど、きちんとした七宝をするにはしっかりとした技術が必要になります。

こちらは完全に確立された方法で、釉薬は市販されていますし、技術書も多く出ています。

だからといって簡単ではないですよ。とても難しい技術です。

それって七宝とどう違うの? 陶芸の釉薬とは。

陶芸の釉薬は長石や木灰、銅、鉄などの原料を混ぜて作ります。これを窯で1100℃から1300℃で熱すると、化学変化により釉薬はガラス質になり色も付きます。このときの置かれた場所の温度や原料の不純物等で色の出方や溶け方が微妙に変わり、陶芸独特の奥深い味になります。

七宝釉薬の原料も基本的には陶芸の釉薬と同じです。しかし七宝は原料をそのまま配合して使うわけではなく、原料を一度ガラス化させて、それを細かく砕いたものを釉薬として使います。つまり、もうすでにガラスになったものを砕いたものを、炉の中で再度溶かして金属に焼き付けるのが七宝。生の原料をミックスしたものを、土などに付けて炉の中で焼き、化学変化を起こしてガラスにするのが陶芸です。

七宝が絵の具を使い、澄んだ美しい色でカンバスに絵を描く絵画のようなものだとすると、陶芸はカンバスの上に原料を置いて化学変化させてできた偶然の模様を楽しむアクションペイントのようなものです。

よけいわかりにくいですかね。

七宝は綺麗な色を出す配合で作ったガラスを溶かすので、とても澄んだ色を出します。そのあたりがジュエリーとの相性が良いゆえんです。しかしhitotoiの目指すものは一般的なゴージャスなジュエリーではなく、わびさびの精神です。ですので不確定な要素が多いが、面白い変化やテクスチャーを出す陶芸の釉薬を使おうと思ったのです。

hitotoi vase ジュエリー

では金胎陶芸とは?

hitotoiの独自技法”金胎陶芸”は独自開発の陶芸の釉薬を金属に焼き付けて色を付けたものです。

たぶん陶芸釉薬を金属に焼き付けたというと、「陶芸の釉薬を買ってきて七宝のように炉で焼くだけでしょ?」と思われる方も多いかもしれません。

しかし、出来合いの釉薬は大体溶ける温度が1100℃以上であり、銀は溶けてしまいますし、銅でもかなりダメージを受けます。ですので陶芸の釉薬はそのまま銀などの金属には使用できません。

楽焼などの釉薬は850℃くらいで溶けるものもありますが、色がうまく出なかったり、出したいテクスチャーが出ないなどの問題が出てきます。ですのでhitotoiは陶芸のような風合いを保ちながらも900℃以下で溶ける釉薬を独自に開発しました。

この独自開発した釉薬が金胎陶芸の重要な要素であり、独自技術であるゆえんです。

苦労の末たどり着いた金胎陶芸。

釉薬の開発ですが、誰もやっていないことのため、この開発にはかなり苦労をしました。釉薬の配合に関する書籍はあるのですが、基本的には1,100℃以上で焼くことを念頭に書いてあるので、その通りに配合しても色が出なかったりと失敗の連続でした。ただ単に陶芸釉薬を買ってきて塗ってるだけではないんですよ。かなりの時間と労力をかけ、失敗を重ねてやっと出来上がったのです。

さらっと苦労の末などと書いてしまいましたが、この辺りは話し出すとかなり長くなってしまうので、また別の機会にでもお話ししたいと思います。

いかがでしたでしょうか?

金胎陶芸の価値を少しでもお伝えできたら幸いです。

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